忍者ブログ

長いお別れにむけて

透明人間

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

透明人間

「新しい部屋にはもう慣れましたか?」と訊かれて、ええ、まあ、そうですね、と曖昧に答える。みんなはっきりと、慣れた・慣れていないと判断できるのだろうか。わたしには自分の考えていることすらわからない。かたちもないし、3秒後にはもう変わっているようなものだから。



新しい部屋は小さくて、わたしと猫たちはあっという間に探索を終えて、自分たちのかたちを部屋に合わせて変えていった。お気に入りの場所(これは時間によって変化する)を見つけ、部屋の呼吸音を記憶した。これが慣れるってことなのだろうか。きっと、そうなんだろうな。猫たちとそんな風に話す。「まあ、でも、どうでもいいことには変わりない」。



東京で働きはじめてもう二年になる。わたしは東京という街が結構好きだ。みんな他人に対して無関心だから、わたしのように他人の目が気になる人間にはそれがやさしく見える。わたしはできるだけ透明になろうとしている。電車のなかで、雑踏のなかで。誰もわたしを見つけませんように。誰もわたしに気がつきませんように。呼吸をひそめているのに、わたしはすぐに見つけられて、理不尽な暴力的行為や言動をぶつけられる。そんなときは、きっとここは誰かのみている夢だから、と思う。夢だから、東京もわたしも、本当は存在しない。




10年くらい短くし続けていた髪を伸ばしている。首に髪の毛が触る感覚が懐かしい。髪はわたしをうまいこと隠してくれる。だけどわたしは自分の、一度も染めたことがない、パーマすらかけたことのない髪の毛が嫌いだ。短いときには目立たないけれど、わたしの髪は赤いのだ。伸ばすとすぐにわかる。「赤毛のテバ、って、良いと思うよ」、そう言ってくれた人のことを思い出す。君は今どこでどんなこと考えてすごしているのかな。君からのメール、人生に希望はあるかと問うたメールに、わたしは一言「ない」と返信した。その答えは今も変わらない。君の方はどう? 新しい部屋には、慣れた?



PR

コメント

プロフィール

HN:
手羽先700
性別:
非公開

P R