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長いお別れにむけて

東京は金曜の夜、ここは真夜中の月曜日










金曜日。
あたたかな部屋から窓の外を見る。外の世界は薄暗くて、もうすっかり冬なんだなあと思う。強い風と雨がばしばしと窓を叩く。泣いている人に何も声を掛けられずにいる。





土曜日。
自動車の後部座席でぼんやりと外を眺めていた。水色の空には白い月があって、その下の田圃では白鳥が群れをなして何かを啄んでいる。日が沈み始める頃、あの白鳥たちが帰っていく場所は、わたしがこれから帰っていく場所と同じなのだった。そう思うと不思議な気持ち。そういえば今日の月と白鳥の羽の色は同じだなあと思うけれど、そんなことを言う相手もいなくて、押し黙る。





日曜日。
お見舞いに行く。先週の日曜日とはいろいろが違っている。雪が降ったり止んだりしている。話すことは当たり障りのないことで、来週の日曜日もまたここにいて、当たり障りのないことを話しているのだろうと思うと、少し可笑しかった。



少し足を伸ばして、天田昭次記念館へ行く。たくさんの日本刀をみる。硝子ケースの向こうできらきら光っているそれは、触れたら指先なんかあっという間に切れるであろうそれは、どことなくあたたかみを持っているように見えた。たぶん気のせいだろう。




冬用の靴を一足買った。これを履いてどこに行こう。わたしはどこへ行けるのだろう。東京は金曜の夜、とイヤホンから歌が流れる。ここは新潟で、今は日付も変わり月曜日。スマートフォンの画面はわたしに身分を問うている。わたしとは一体何者なのだろう。白鳥の鳴き声が聞こえる。猫はぴたりとわたしにくっつく。境目のなくなったぬくもり。ほどけた靴紐を丁寧に結び直す夢。親指で押すキャンセルボタン。仮免許証の疲れ切った顔。寝て起きたらまた「明日」がはじまる。少しだけ泣いて、少しだけ眠る。







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手羽先700
性別:
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