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長いお別れにむけて

新潟へ帰ったときのこと

旧正月に帰ったきりだった実家へと帰った。わたしは実家へは電車とバスと新幹線に乗って行く。本当はもっとスマートなルートがあるのだけれど、あえて遠回りをいる。どうしてかと言うと、自分が昔住んでいた町を経由するルートがとても気に入っているからという、ただそれだけの理由なのだけれど。その町には一年しかいなかったけれど、わたしが暮らしていた町が、今とても親しい関係の人が暮らしていた町でもあって、実際にすれ違うくらいはしていたのかもしれないと思うとなんだか嬉しくなる。



ともかくわたしは電車とバスと新幹線に乗って新潟へ帰った。よく晴れた日のバスの最後尾座席にはしあわせがあると思う。だからわたしはビートルズをシャッフルにして聴いていた。トマス・ピンチョンを開く。なんてしあわせなんでしょう。



実家はリフォームして、とてもきれいになっていた。何もかもぴかぴかになっていたし、おまけに、かわいい子猫までいた。子猫は真夜中にわたしの膝にやってきて、「おまえもここの子になるんだね?」とわたしに尋ねるように目を覗き込んできた。あのね、わたしはあなたよりずっと前から、ここの子なんだよ。



だけどもうわたしのいた残り香さえ、そこにはなかった。わたしは本当にここで十八歳まで暮らしていたのだろうか。わたしが帰るべき家とはどこなのか。そんなことを考えてしまう。休暇が終わって帰るところは、三毛猫とキジトラ猫の待つ、狭苦しいアパートの一室なのだ。夜中に公衆電話から電話が掛かってくる。どうして公衆電話からの電話って、あんなに「遠い」のだろう。



帰りの新幹線に乗って、動き出すとすぐに新潟は後ろに流れて行ってしまった。見送りにきてくれた家族も、レインボータワーも、海も。それから夕焼けの橙色が車内を染めた。きらきら光る街並みを見つめながら、わたしは帰るべき場所について考える。



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