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長いお別れにむけて

夜の東京で咲く花

「漠然とした不安」はやはりまだわたしを飲み込んでいる。わたしは息をひそめて波が引くのを待ち続けている。



夜の東京にはたくさんの人がいる。別れを惜しむ恋人たち、酔い潰れて座り込む人、これから家に帰る人、これからどこかへ出掛けていく人、アルコール、煙草、人間のにおい、に混じって、不意に花のかおりがした。香水のにおいではない、と思った。そのかおりはしばらく歩き続けるわたしについてきた。わたしはたくさんの「これから家に帰る人」の流れに身を置き、すっかり「これから家に帰る人」になりきって、改札をくぐり抜ける。花のかおりはいつの間にかいなくなっていた。



わたしは君のように自分のなかにあるきらきらしたものを信じられないでいる(きっとわたしにはそんなものがないのだろう)。いつか君はわたしを忘れるだろう。「漠然とした不安」を抱えて電車に乗る。わたしは「漠然とした不安」がわたしと共にあることに、どこかで安堵している。電車のドアが開く。たくさんの人間が吐き出されてゆき、同じくらいたくさんの人間が飲み込まれてゆく。「1番線の電車はすべて終了しました」という文字列をみて、わたしはどこにも行けないような気になる。気になるだけで実際にはそんなことないと知ってはいるけれども。
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