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長いお別れにむけて

メロウでイエロウな夜

赤玉スイートワインがわたしの前にちんと座っている。グラスはすでに空。本当はもっともっと強いお酒が今すぐ必要なのだけれど、あいにく今ここには赤玉スイートワインしかない。きみはくるってるんだ、と言われたことを思い出す。大体、誰だって少なからず狂っているものだろう。猫たちがすやすやと眠っている。猫たちの呼吸する音は聞こえないけれど、おおむね規則正しくお腹が上下している(たまにため息をつくように大きく上下したりもする)。煙草を一本だけ吸う。見る間に灰にしてしまう。



3年くらい前、少しでも気を抜くとべろんべろんに酔っ払ってしまう時期があった。その頃わたしはアルバイトを掛け持ちしながら大学院で文学を学んでいた。だけどあの頃わたしの頭はすかすかになっていたんじゃないかと、今は思う。あちこち出歩いたし色々なものを見たけれど、思い出すのはいつだって靄がかった映像だ。煙草だって今とは比べものにならないくらい吸っていた。だけどもう過ぎたこと。終わったこと。すべて。わたしはよく晴れた日に一度死んで、死んだまま家に帰り、布団を干して、また生活をはじめて、今は仕事をしながら、生きている。お酒も煙草もほどほどに。



隣の部屋から聴こえてきていた映画の音も止んだ。赤玉スイートワインの丸い赤をじっと見つめる。オーディオが呼吸を止める。わたしの歪んだ色眼鏡越しに見えている世界で、猫たちは呼吸をし続けている。わたしには希望というものがない。ただひたすらに好奇心だけを抱いている。あなたこのままだとしんじゃうよ、と言われて、そうかもしれない、としか答えようのない、そういういきものとして。ありとあらゆるものが羨ましく妬ましい、と同時にどうでもいいと思っている。空き瓶をゴミ箱に入れて、わたしも猫たちの間でそろそろ眠りにつくべきなのだ。だけど目玉がそれを許してくれない。




拍手押して下さった方、ありがとうございました。なんとか、生きています。
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