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長いお別れにむけて

スモーキン・ビリー

つらいときには楽しかったことを思い出すといい、と言われて、そうしてみようと素直に思う。だけどわたしは楽しかったことをひとつも思い出せなかった。思い出したとしても、つらいときに思い出したそれは、何かが損なわれてしまっているのだ。わたしのたくさんの宝物はどれもどこかが損なわれて欠けている。だから大切なのだ、とわたしは思う。(なのに、失うことで安心している)



煙草に火をつける。思い出すことは色々ある。高校生のとき仲のよかった女の子が貸してくれたミッシェルガンエレファントのCDのことを唐突に思い出して涙ぐむけど、別に悲しいわけではない。過ぎていったもの。久しぶりにスモーキン・ビリーを聴いてみる。付随する記憶、小話、誰かの思い出、空気のにおい、光。海。真っ黒な海。



つらいときにはただじっと息をひそめてやり過ごすのが一番いいと思っている。漠然とした不安の波を頭から被ってわたしはその中で息を殺す。今までだってやり過ごせたんだから平気だ、と思う気持ちと、今みではやり過ごせたけど次はもうだめかもしれない、という気持ちが渦を巻く。怪物は大きな口を開けて笑う。煙草はゆっくりと蚕の幼虫みたいな灰になっていく。



息をひそめて、もう何年経っただろう。
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