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長いお別れにむけて

ジーと鳴くのは蛍光灯

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ジーと鳴くのは蛍光灯

眠りに落ちるほんの一瞬前に世界はわたしに微笑みかける。わたしは許されたような気持ちになって、やはりひとりで微笑み、身を委ねようとする。高速道路で車が走る音が潮騒のように部屋のなかに響く。月明かりのようにしらじらとした蛍光灯の明かりが部屋に一筋さしこんでいる。ジー、ジー、と蛍光灯は鳴く。それがまたどうしようもなくさみしい気持ちを呼び起こす。世界とわたしの輪郭が溶け出していく。個でありたいといつも望んでいる。いつでもわたしは誰にとっても他者でありたいと思っている。それなのにこのざまだ。わたしは世界が微笑む瞬間に個を失う。世界にどろどろと溶け出してスープのように混濁していく。それがわたしにとっての眠りだ。わたしの思考も感覚も何もかも溶けていく。輪郭を失う。ときどき、わたしの世界はものの大きさが狂い出すことがあるのだけれど、そしてそういうときの世界はとても冷たい目でわたしを見つめて笑っている。眠りに落ちるほんの一瞬前には、同じ世界とは思えないくらいに微笑むのだ。すべてがみえる、ことばは不要で、月は隠れる、闇のなかで海の音をきく、ほらおまえがむかしきいていたおとだ、まがいものなんだ、こんな時間には嘘しかないのだから。わたしはそうして眠る。ほんの数時間だけ何も考えることなく世界に受け入れられる。
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